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起訴されたら

起訴されても勾留は続きます

 勾留されたときには、10日間勾留することが決まった、と説明されますが、10日間(延長されて20日間)で釈放されるわけではありません。

 第1回公判期日は起訴から60日以内にしなければならないとされていますが、通常は起訴から1か月程度で開かれます。その後は、自白事件ならその日に結審して、1週間くらいあとに判決言い渡し。否認事件なら1か月に1回のペースで公判が開かれ、早くて半年後くらい、長ければ何年も先に判決言い渡しとなります。この間、原則として勾留されたままですが、起訴された後は、罪証隠滅のおそれがないと裁判所が認めた場合には、保釈保証金を裁判所に納めて、保釈されることがあります。この保釈保証金は、逃亡や罪証隠滅などをしなければ、有罪になっても返してもらえるお金です。しかし、用意するのに相当苦労する金額が設定されます(無職の人でも200万円くらいは要求されるんじゃないかな。裁判官にもよるとは思いますが。)。

 第1回公判期日では、被告人は氏名、本籍、住所、職業を聞かれ、起訴状に記載された事実に間違いがないか、違う点があるならそれはどこかを聞かれます。この後は、被告人が裁判中に発言する機会は、後で述べる被告人質問期日までありません。

 否認事件の裁判は、まず、検察官が被告人や関係者の供述調書や警察官の捜査報告書などの書証を証拠請求します。弁護人はそのコピーを読んで(余談ですがこのコピー代がやたら高い。)、被告人と打ち合わせて証拠調べに同意するかしないか決めます。不同意とした書類は、原則として裁判官の目には触れません。代わりに、検察官はその書証の作成者の証人尋問を請求し、次回以降、実施します。

 証人尋問ではまず検察官が証人に話を聞き、弁護人が反対尋問をし、最後に裁判官が補充して話を聞く、という流れになります。検察官の立証が終わると、弁護人の立証に移ります。弁護人も証人尋問を請求する権利があるのですが、裁判所は、検察官の証人尋問請求はだいたい認めるのに対し、弁護人の請求は、情状証人以外は「必要性なし」として却下することが多いです(本当に、裁判所は公平でも公正でもないですね。)。採用されれば、検察官請求の証人と同じように証人尋問が実施されます(ただし、順序は逆で、最初に弁護人が証人に話を聞き、その次に検察官が反対尋問をする、という流れになります。)。

 すべての客観的証拠の取調べが終わると、最後に被告人質問期日が開かれ、被告人が事件について弁解する機会を初めて与えられます。ここで警察での取り調べで作られた自白調書と違うことを述べたときには、自白調書を証拠として採用するかどうかについて弁護人が意見を述べ、大体の場合裁判所は弁護人の意見は無視して採用して取り調べます。また、証人が検察官の取調べで作成した調書と異なる内容の証言をした場合にも、一定の要件のもとで検察官が作成した証人の供述調書が証拠採用されて裁判官の目に触れることがあるのですが、私は経験がありません。

 そして、最後に検察官の論告求刑があり(要するに、検察官の判決に対する意見が具体的な量刑とともに述べられるのです。)、弁護人が弁論をし、被告人に最後に言いたいことを尋ねられて結審し、判決の言渡しとなります。

弁護人の弁論

 弁論とは、公判で取り調べられた証拠から認められる事実のうち、裁判所に注目してほしい部分を指摘して、裁判に対し弁護人の意見を述べるものです。多くの弁護士が、法律上執行猶予を言い渡すことが可能な事案に対しては「執行猶予の判決を求める」、執行猶予の判決が言い渡しえない事案に対しては「寛大な判決を求める」という結論しか言いません。その結果どうなるかというと、執行猶予の判決の場合、検察官の求刑どおりの判決の判決が言い渡されてそれに対し執行猶予の言渡しが付される、というのが通常ということになります。

 しかし、このような事案があります。大麻の所持の事案で求刑が懲役1年6月で、判決が懲役1年6月執行猶予3年というもの。大麻の所持の初犯の量刑の相場は懲役10月執行猶予3年で、明らかに刑が重すぎます。それでどうなったかというと、検察官が「求刑が重すぎたからもっと軽くすべきだ」として控訴しました。弁護人はなにをしていたのでしょう。執行猶予が付けば国選弁護の報酬は変わらないからスルーしたのでしょう。それより裁判所は何やってんだという話です。裁判所がまともに審理していないといういい事例です。

 私は、弁論においても、検察官の論告求刑と同じく、具体的に懲役何年執行猶予何年が適切かを具体的に述べた意見を言うようにしています。