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ステップごとの時間は決まっている

無駄に勾留されたいですか

 逮捕されたら、48時間以内に検察庁に送検され、その後検察官は24時間以内に裁判所に勾留請求するかどうかを決めなければいけないことになっています。東京23区では、通常逮捕の翌々日に検察庁に護送され(逮捕が朝早いため翌々日の護送バスの発車時間を待っていると48時間ルールを守れないときは、翌日)、検察官の取調べを受けます。検察官はこの取調べの結果、勾留請求するかどうかを決めます。
 勾留請求がされると、日本の裁判所はほぼめくら判をおすかのように勾留を認めます。示談をすれば不起訴になって当たり前をいう事件(初犯の万引きや自白している痴漢事件など)でもそれは同じです。

 そして、勾留は勾留請求の日から10日間と決まっており、それより短い日数を裁判所が定めるということはありません。不起訴が見込まれる事件は、検察官もそれをわかっていますから、勾留請求前に示談をすれば検察官はあえて勾留を請求するようなことはしません。

 しかし、示談をしなければ、10日間勾留されます。これで一般の社会人は社会的に死にます。微罪で逮捕されたら、48+24=72時間以内に示談をすれば、無駄に10日間も勾留されなくてすむのです。

逮捕されたら一刻も早くお電話を

 そういうわけですので、逮捕されたらすぐにお電話ください。携帯電話にいきなりお電話いただいて結構です。時間もお気になさらず結構です。都合がわるいときには電話に出ませんので、おかけになる分には24時間いつお電話いただいても結構です。電話に出られるときには24時間いつでも対応します。

 通常、法律相談は直接面談のみとさせていただいており、電話で事情をうかがうことはしないのですが、刑事事件の場合は、「刑事事件なのですけど」とおっしゃっていただければ、簡単な事情聴取を電話でさせていただき、緊急度をトリアージして対応させていただきます。

 本当に緊急、という場合には、24時間、時間を問わず、就寝中でも私の自宅にお越しいただき、面談をさせていただいて初動対応を開始するということもしております。

勾留されないと国選弁護人はつきません

 私選弁護人はお金がかかる。確かにそうです。ボランティアではないので、ただではありません。じゃあ国選でいいや、とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、国選弁護人の選任手続きは勾留されてから始まります。ですから、国選弁護人と実際に会えるのは勾留されてから数日後、ということになります。

 

これでも国選弁護人に期待しますか

国選弁護人は示談交渉をしてくれるのか

 10日は勾留されてもいいやという場合でももう一つ問題があります。国選弁護人が示談交渉をしてくれるのか、という問題です。

 私の担当した被疑者の同房の人に、200円もしないスポーツドリンクの万引きの初犯で逮捕勾留された人がいたのですが、その国選弁護人は示談交渉をしてくれず、その結果起訴され、公判まで1か月以上勾留がつづいたまま、ということです。

 示談金がなければどうしようもないことですが、留置場に約2万円の所持金があり、200円のスポーツドリンクの示談には十分なお金を持っている事案でした。国選弁護人は建前上、私選弁護人と同じ弁護活動をしなければいけないことになっています。

 しかしながら、報酬が弁護人の活動のインセンティブになっていることは否定できないところです。この国選弁護人の報酬におかしなところがあります。示談して被疑者を不起訴にするより、示談しないで起訴され、その結果執行猶予の判決を受けた方が国選弁護人の報酬は高いのです。

 ある弁護士(刑裁サイ太さん。有名な人なのでググってね。)のブログを引用いたしますが、

20日勾留されてその間接見に行きまくり,地裁の被告人国選になってから被害弁償ボーナスを得て,無駄に2期日+判決言渡し期日を入れさせた場合の国選弁護報酬は,25万8200円にもなります! これに対して,2回だけ接見に行き10日間で証拠不十分で不起訴にした場合はたったの4万6400円です。」

「被害弁償ボーナスもありますが,被疑者段階で被害弁償するのはオススメできません! 変に被害弁償してしまって不起訴にでもなったら,せっかくの被告人国選で稼ぐチャンスをみすみすフイにしてしまうからです。被疑者国選段階の被害弁償ボーナスも,被告人国選段階の被害弁償ボーナスもまったく同額なので,被害弁償は起訴後にやりましょう^^

という基準を法テラスは定めているのです(現在は報酬基準は改定され、国選弁護人の報酬はもっと低くなっています。)。

 ちなみに上記は文面通りの行動を弁護士に推奨する趣旨ではなく、そのような不合理な基準を定めた法テラスを批判する文脈で書かれたものです。しかし、稼ぐために実際にこのブログ通りの行動をしている国選弁護人もいるのは間違いないでしょう。もちろん良心的な国選弁護人もいるのですが、国選弁護人は選べないので、そのような弁護士にあたるかは運でしかありません。

国選弁護人は親族・知人への伝言を伝えてくれるのか

 接見禁止決定がされた場合、弁護人といえども外の人への伝言については伝えられることと伝えられないことがあるのですが(外の人からの伝言についても同様です。)、ここでは生活に関する伝言で事件の証拠隠滅とは関係ない話を前提にします。
 私が私選弁護人としてついていたあと、とある事情で私選弁護人を辞任した被疑者がいました。その被疑者から、数日たって手紙がきたのですが、

国選弁護人が想像以上にひどい

自分は裁判を進めるために税金で選任されているので裁判以外のことはやりませんと言い切った。

ということで、知人への生活用品の差し入れの依頼の伝言すら取り次いでくれないという嘆きの手紙でした。

 実際、ペットへの餌やりは国選弁護人の職務ではないとして、報酬の対象外であるとの決定を法テラスはしており、国選弁護人は被疑者・被告人の生活の面倒をみることはしないという流れが加速しそうです。

 お金は払うからペットの世話をしてくれ、と頼んでも、国選弁護人は被疑者・被告人からお金を受け取れない決まりになっているので、そういう頼みもできません。

 これでも国選弁護でいいと思いますか。